2000年2月18日(金曜日)


「TV出演」

 「こんにちわ。福井TV報道部です」

 忙しく依頼者との対応や準備書面の作成に負われている最中、突然の電話。

 「はい、何でしょうか」

また、情報公開の取材かな。と思っていたら、2月県議会で県の情報公開条例が改正されるので、日曜日朝のトーク番組に出演してくれと言う。

 「はあ?」

 そう言えば、オンブズマングループを福井で立ち上げたときも、FM福井から番組出演の依頼があった。でも、生放送番組なんて、とんちんかんなことや不規則発言するか分からないから、その週はだめと断った。そのときは、FM福井の女性アナウンサーからの直接の申込だったけど、「これも旬のものですから。時期が遅くなるとニュース価値がなくなりますから」と言われ(考えてみれば失礼な話だ)、うまい具合に出演はしなくてすんだ。幸い、今度も「来週の金曜日の収録予定です」と言われ、ちょうどその日は日弁連の用事で東京出張が入っていたから、それを口実に断ろうとした。そうしたら、木曜日はどうか、土曜日はどうかと言われ、時間帯は夜8時以降だと言われると、さすがに毎夜打ち合わせを口実に断ることもできず、やむなく受けることになった。

 当日は、ひどい雪の夜。路面は凍結してはいないものの、吹雪いていて、あたりがよく見えない。東京と違って、福井はTV局もやや辺鄙なところにある。商店街や住宅街を抜け、真っ暗な(いや、雪で真っ白な)中にぽつんとTV局がある。車で走って20分くらいで着く。集合予定の時間までまだ10分あるから、その間を利用して、車の中で、討論テーマについての自分のメモを読み返す。やっぱり、いきなり話題をふられて答えられないのもみっともないから、資料をいろいろひっくり返して、話す内容をメモに書き留めてみた。でも、そうしたら、かえって、細かい数字や、やたら読みにくい判例の言い回し、さらにはお役所用語のオンパレードになった。さすがにこんなこと話せないなとも思うが、数字なんかは覚えておかないといけないから、受験生よろしくメモを読み返して、覚え込む。

 トーク番組とは言うものの、司会者から簡単な進行メモを渡されて、後は自由に話してくれと言われる。でも、録画とは言いながら、放送禁止用語とかが出ない限り、編集せずにそのまま放映するという。言いとちれないな。しかし、県批判をしても、そのまま流してくれそうだ。とは言え、4人出演者がいる中でひとり出しゃばるわけにはいかないし、県の悪口ばかり言ったのでは、お茶の間の受けが良くないだろうな。そんなことを思いながら、スタジオに降りる。さすがにもう夜9時だから、人の気配もない。スタジオの中の一部だけ、照明で明るく照らし出されている。へえ〜、スタジオって本当に、照明のあたるところが明るいだけなんだ。最初に、自己紹介の5分間の部分だけリハーサルするという。というのも、その部分だけシナリオができているから。

「あの〜、どっち向いてしゃべればいいんですか?」

1カメとか2カメとかあって、確かに動いているカメラには赤いランプがついている。そっちを向いて話すのかな?なんて思っていたら、司会者とか質問者の方を向いて話してくれれば、後はカメラが勝手に映すという。そうか、カメラ目線はしなくっていいんだ、と妙なところで納得する。

 面白いというか何というか。番組の最初に流れるVTRも、番組の途中で流すVTRも全部その場で流し、CMの部分もその時間分だけ空けるという。へえ〜、随分、手作りなんだ〜。まるで、ワープロ打ちする内容の部分を白紙にして、最後の方に署名だけをとる調書作りみたいなもんだ、という変な感想を持つ。

 自己紹介の順番は2番目。1番目は県のお偉いさんで社会福祉協議会会長さん。用意してきた原稿をお読みになるものだから、長い(というか、長く感じる)。でも、モニターに映っている姿は、とても落ち着いていて、風格を感じる。私の場合は、

司会者が

「ボランティアで行政監視活動をする市民オンブズマン福井代表幹事の湯川さんです。活動のきっかけは何だったのでしょうか?」

と私に発言を向けられてから30秒程度で自己紹介をするというシナリオだが、

「湯川さんです」

と紹介されて、すぐに話し出してしまった。ははは、いかんいかん。ちょっと緊張気味かな。

 リハーサルが終わっていよいよ本番だ。カメラの脇にいるADが

「本番1分前、30秒前、5秒前」

さあ、タイトルのVTRが流れる。司会者が話し出す。

「おはよございます。今日は、県の公文書公開条例が今月28日の・・・」

と話し出したかと思いきや、いきなり

「ごめんなさい。間違えちゃいました。改正案をつけるの忘れました」

いきなりNG。出演者は皆自分の自己紹介をどうしゃべるかに頭が行っているから、どこがNGかさっぱり分からない。爆笑。でも、これで緊張がほぐれた。リハーサルのときは6分以上かかった自己紹介コーナーが順調に5分程度で収まった。

 全部で50分程度の番組だが、出演者が4人もいると、自分の発言の順番はわずかしか回ってこない。しかも、ひとりで長々と2分も3分も話すなと言われるから、いきおい、早口になるし、話したいことのうちの4分の1もしゃべれない。ちょっと腹ふくるる思いをしているうちに、番組収録時間が終わった。

「お疲れさまでした〜」

 何をしゃべったか、今となっては、何も覚えていない。外の景色のように頭の中は真っ白だ。日曜日の朝が待ち遠しく、また恐ろしい。覚えているのは、司会者の一人が女性で緑色のスーツがやけに鮮やかで可愛かったことと、男性司会者の頭が妙にまぶしかったこと(ごめんなさい)。  

◇◇湯川二朗

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