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新会社法の全体像

2006.03.24 弁護士五右衛門(服部廣志)

はじめに

新会社法の制定は、徳川家康による大阪城攻略・炎上に例えられる。外堀を埋め、中堀を埋め、そして、天守閣の炎上である。

1.新会社法の制定

平成17年6月29日新会社法が制定され、平成18年2月7日新会社法施行のための法務省令等が制定された。

後は、施行日の決定を待つだけとなった。

注意すべき点がある。

イ 新会社法制定に先立つ法制審議会の委員らは、前記法務省令等の内容を見て驚いているという事実である。

通常、省令等は法律の施行細則を定めるものであり省令等により実質的に法律の中身に変更を加えるというようなことはあり得ない。

しかし、今回の法務省令等は上記の常識ないし法令制定の約束事を逸脱している可能性があるということである。

ロ 従って、今回の新会社法の中身を理解するについて、会社法のみの検討では不十分であり、省令等の中身の検討が不可欠である(省令等の効力に問題はさておく)。

2.新会社法制定の経過と意味

今回の会社法制定を単純に「改正がなされた」と理解してはならない。

徳川家康による「大阪城攻略」に例えれば、ここ何年間にわたる度重なる商法改正は、大阪城の外堀を埋め、そして中堀を埋めてきたという事実である。平成13年の「自己株式取得の大幅な規制解放」は外堀埋没であり、資本金規制の特例法による「資本金1円株式会社設立の容認」は中堀埋没であり、今回の会社法制定はまさに大阪城天守閣の炎上、そして落城であったという事実である。

資本金規制の特例法による「資本金1円会社」は5年以内の300万円(有限会社)ないし1000万円(株式会社)への増資と、増資しない場合の会社解散を定めていた。

これを文字通り理解するのは愚かなことである。当初から、増資など求められてはいなかったのである。今回の会社法制定により増資の義務が解除された。

最低資本金規制特例制度によって設立された「確認会社」は新会社法の施行により、5年以内に最低資本金以上の増資を行わなくても解散は不要となったが、これは当初からの既定の方針であったと理解すべきである。

そして今回の会社法制定は決して商法の改正ではない。

従来の商法会社法編が定めていた「株式会社概念」の根本を崩し、新たな制度を創設したものであり、新法の制定である。既存の商法会社法編の知識は全く通用しない新法の制定である。

今回の会社法制定については、上記のように理解して初めて、その全容と改正内容の系統的理解が可能となる。

3.会社法制定と特例(有限)会社

法制審議会委員を勤められ今回の会社法改正に関与された東京大学の江頭教授によると、今回の会社法制定による主たる改正は6枠であるという。

改正6枠

(1)有限会社の廃止

(2)株式譲渡制限会社関連の改正

(3)合同会社(LLC)の新設・有限責任事業組合(LLP)法の新設

(4)会計参与という外部の税理士、公認会計士による財務諸表への関与の制度の新設

(5)会社の組織を他の組織へ組織替えする組織再編行為の自由化

(6)剰余金(利益分配)分配の自由化など

有限会社の廃止により「特例有限会社」となる既存の有限会社はどうなるのか。

イ 従来の有限会社のまま会社を継続したいと考える場合、何もしなくてもいい。定款変更手続きも、登記手続きも不要である。

ロ 何もせず、従来の商号、有限会社であるとの表記も認められる。

ハ 特例会社は、会社法上の株式会社として扱われるものの、従前の有限会社法の規律が原則適用されるのである。

しかし、株式会社として取り扱われるため、新会社法施行後は、「有限会社の定款」は「株式会社の定款」に、「社員」は「株主」に、「持分や出資口数」は「株式や株式数」と読み替えられるが、取締役の任期などは従前同様、「任期の制限はない」し新会社法により株式会社に課せられる「決算公告の義務」も生じない。

従来どおりの運営をすればいいのである。

4.新会社法についての、一言表現

○ 面従腹背

○ 表現・言葉と実体の乖離

○ あるのは、定款自治

ないのは、情報開示

○ 特例有限会社から通常の株式会社へ

イ 今回の改正にもかかわらず従前の有限会社の運営方法を維持する特例有限会社から、通常の株式会社への移行は、いつでも、当然、認められる。

ロ 特例有限会社が、改正法にもかかわらず、「特例として」、「有限会社の存続が認められているもの」であれば、株式会社への移行は組織変更となる。

しかし、「3.会社法制定と特例(有限)会社」のハ記載のとおり、そのようなものではない。

特例有限会社も、改正会社法の株式会社であり、ただ、商号について従前の有限会社という表記が認められ、かつその規律も従前の有限会社法の規律と基本的に同様であるというに過ぎない。

ハ すなわち、特例有限会社から通常の株式会社への移行は組織変更ではなく、商号変更として取り扱われるのである(関係法律整備法45条)。

商号を変更することにより、特例の適用は受けなくなるという性格のものである。

5.新会社法と企業会計原則-面従腹背

会社法制は商法改正の流れのなかで、企業会計原則と一定の距離を保ちながら、これを組み入れるという2面性を継続し続けてきている。

会社法制は企業会計原則上の「資本」概念を離れて、剰余金処分の財源規制という形で、利益配分ないし利益配当をするという手法をとってきている。

貸借対照表上の資本金も資本準備金も、株主総会の決議により、配当財源とすることが可能となっている。会社の資金調達の柔軟性、運用、処分についての会社の裁量を大幅に認めて機動的な会社運営を目指している。

企業会計原則の考え方に従えば、企業会計原則上の「資本」を配当財源になどできないのは理の当然である。

しかし、会社法はそれをも否定している。

会社法453条(株主に対する剰余金の配当)

株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。

会社法458条(適用除外)

第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。

上記のように企業会計原則の考え方では採用できない利益処分を認めながら、会社法は次のような条文を設けている。

会社法431条

株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

以前の商法32条2項は「商業帳簿の作成に関する規定の解釈については公正なる会計慣行を斟酌すべし」と定められ、公正な会計慣行については「従う」ではなく「斟酌すべし」という規定であったものが、新会社法においては前記のとおり「従う」と規定している。にもかかわらず、実態は前記のとおり、企業会計の根本とも言うべき「資本」概念を無視した剰余金処分を認めているのである。

会社法は企業会計原則をどうみているのか。

「面従腹背」というような表現も妥当するかもしれない。

以上のような会社法、そして企業会計原則に準拠するという2面構造を保持していることから、一例として、「資本準備金と利益準備金の区別は撤廃した」(会社法)といいながら、貸借対照表の表記には「資本準備金と利益準備金の区別は残っている」(企業会計原則)というようなわかりにくい状況となっているのかもしれない。

6.新会社法の到達点(大阪城落城の意味 )1-物的会社の放棄

従来、会社は物的有限会社である有限会社と株式会社、そして人的会社である合名会社、合資会社に分類されていた。

人的会社は主として会社構成員の人的信用に立脚し、物的会社はその会社の物的資本などに信用の基礎を置くとも言われてきた。だからこそ、合名会社、合資会社などの人的会社においては、その構成員について、人間に着目した「社員」という名称で呼ばれ、株式会社においては物的資本の出資を意味する「株」を出資した「主」という意味で「株主」と呼ばれていた。

だからこそ、株式会社や有限会社には最低資本金制度というものがあった。株式会社は1000万円、有限会社は300万円という資金が会社設立については必要とされていた。このような資本金がなければ有限会社や株式会社を設立することはできないという考え方である。この最低資本金制度、それの延長線上にある資本充実という基本的な考え方が、商法会社法の規定の根本にあったわけである。 

商法会社法の諸規定が設けられている基本的な理由というか、根本的な理由が、このような最低資本金制度、それの延長線上にある資本充実という基本的な考え方と整合するようにつくられていた。それが会社と取引をする債権者らの保護になるという発想である。

言葉を変えれば、このような最低資本金制度、それの延長線上にある資本充実という基本的な考え方と矛盾する考え方や企業行動は許されない、と考えられていたわけである。

ところが、米国の圧力もあって、規制解放の嵐が始まった。

「最低資本金制度の撤廃」、そして「資本充実原則のなし崩し的放棄」、すべてはここから始まったということを理解しておく必要がある。

このように理解することにより、新会社法の全体が系統的に理解することが可能となる。

もとより、今回の新会社法の立案に関与された法制審議会会社法部会長を務められた前掲江頭東京大学教授は、今回の会社法制定について、「資本維持の原則を放棄したわけではないと思っている」(前記詳解4頁)と言われている。

しかし、このような発言がなされること自体、新会社法が「資本維持の原則をなし崩し的に放棄した」ことを示していると理解することも可能である。

大阪城落城=株式会社における物的会社性の放棄の、伏線として、平成13年の自己株式取得の原則的規制緩和及び平成15年の最低資本金特例法の制定などがあり、その延長戦上に、合名、合資会社から株式会社への組織変更の容認という新会社法がある。

株式会社が自己の株式を取得するということは、とりもなおさず、払い込まれた資本金の払い戻しという側面、要素がある。だからこそ、従来、株式会社の自己株式取得には厳しい規制がなされていた。また、合名会社、合資会社というような構成員の人的要素を重視する人的会社と出資者が誰であるのかは重要ではなく払い込まれた資本、資本金に重要な意味があった株式会社とは全く異質の会社であると考えられていたからこそ、合名会社などの人的会社から株式会社という物的有限責任会社への組織変更などは認められていなかった。

しかし、大阪条落城=株式会社における物的会社性の放棄により、このような自己株式取得の規制や人的会社から物的会社への組織変更を規制する理由がなくなった。

その他払い込み金保管証明制度の一部撤廃、多様な種類の株式発行の容認、定款自治の拡大なども、その延長戦上にあることを知るべきである。

会社法を理解するためには、立案に関与した人の言葉ではなく、会社法制の実態を直視することにより、その系統的理解が可能となる。

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7.新会社法の到達点(大阪城落城の意味 )2-社団性の放棄法人とは一体なんだ。

法律が、人間と同様に、権利と義務の保有が肯定されるもの、社会的実在性を持つものと考えられてきた。従来、個人と離れて、社会的実在性の存在というようなことが法人肯定の暗黙の前提であった。

しかし、新会社法は、取締役1名、株主1人、資本金1円という株式会社の存在を容認した。1人会社を容認した。合名会社においても、株式会社においても。このような形態であっても会社であることを容認した。

「社団」法人とされてきた会社は、複数の社員ないし株主の存在を当然の前提としていたにもかかわらず、商法改正により、それがなし崩し的に放棄され、新会社法により、それが確定した。1人でもいいと。

社団=社会集団であって、それが個人とは別個の社会的実在性を保有しているものに法人格を認めるという従来の社団法人、会社の概念は完全に崩壊したのである。

個人と法人とはどこで区別するのか。社会活動をしているのは特定のAという人間1人。

単純に想定できるのは資産、負債の帰属である。当該取引による資産は誰に帰属するのか、当該取引による負債は誰に帰属するのか。個人なのか、会社なのか。

このようなことからか、新会社法はすべての株式会社に「決算公告」を義務づけた。1人会社容認の当然の帰結といえるかもしれない。

会社法440条1項(計算書類の公告)

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

このように会社に決算公告を義務づけ、会社と個人の峻別を求めたとして、問題は残らないのか。

立案当局である法務省は次のようにHPに掲載している。

法務省

Q 10 最低資本金規制を撤廃することにより,会社の濫設等の弊害が生じ,株式会社制度の信頼が損なわれることはないですか。

最低資本金制度を撤廃することにより,株式会社を設立することが容易となるのは確かですが,設立された会社の法人格が濫用される事態への対応策は,設立が容易になるか否かに関わりなく必要なことです。もし,株式会社制度が濫用された場合には,判例により認められている法人格否認の法理のほか,役員の対第三者責任の規定等により,適切な解決が図られることになります。

裁判所が採用する法人格否認の法理とは次のようなものである。

最高裁第一小法廷昭和44年2月27日判決

上告人の上告理由について。

およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが法律上別個の人格であることはいうまでもなく、このことは社員が一人である場合でも同様である。

しかし、およそ法人格の付与は社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる立法政策によるものであつて、これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、法的技術に基づいて行なわれるものなのである。

従つて、法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。

そして、この点に関し、株式会社については、特に次の場合が考慮されなければならないのである。

思うに、株式会社は準則主義によつて容易に設立され得、かつ、いわゆる一人会社すら可能であるため、株式会社形態がいわば単なる藁人形に過ぎず、会社即個人であり、個人即会社であつて、その実質が全く個人企業と認められるが如き場合を生じるのであつて、このような場合、これと取引する相手方としては、その取引がはたして会社としてなされたか、または個人としてなされたか判然しないことすら多く、相手方の保護を必要とするのである。

ここにおいて次のことが認められる。

すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に存在する実体たる個人に迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であつても、相手方は会社という法人格を否認して恰も法人格のないと同様、その取引をば背後者たる個人の行為であると認めて、その責任を追求することを得、そして、また、個人名義でなされた行為であつても、相手方は敢て商法五〇四条を俟つまでもなく、直ちにその行為を会社の行為であると認め得るのである。

けだし、このように解しなければ、個人が株式会社形態を利用することによつて、いわれなく相手方の利益が害される虞があるからである。

法人格否認の法理は例外的な法理論である。

会社と取引をした場合、たとえそれが1人会社であっても、当該個人に責任追及は原則としてできない。取引当事者は会社であって、個人ではないのだから。

法人格否認の法理はこのような原則をつぶす論理であり、例外的な法理論なのである。例外を主張する者は、その例外の事例に該当するものであることについて、証拠を提出できなければ勝訴できないのである。至難の業である。

また、「役員の対第三者責任の規定等により適切な解決が図られる」と掲載されているが、役員が個人として責任負うというようなことも例外事象なのです。

理屈はわかる。

しかし、このような法理や条文により適切な解決が本当に可能なのであろうか。

言葉は美しい。しかし、実態はどうなんだろう??!!

8 大阪城炎上の跡(会社法の系統的理解)定款自治の拡大-ないのは情報開示

○ 新会社法は多様な会社組織の構成の選択を認めている。

会社の組織、機関の構成として次ぎのようなものの選択が認められている。

イ 株主総会 取締役

ロ 株主総会 取締役 監査役

ハ 株主総会 取締役 監査役  会計監査人

ニ 株主総会 取締役 会計参与

ホ 株主総会 取締役 監査役  会計参与

ヘ 株主総会 取締役 取締役会 会計参与

ト 株主総会 取締役 取締役会 監査役

チ 株主総会 取締役 取締役会 監査役 会計参与

リ 株主総会 取締役 取締役会 監査役 会計監査人

ヌ 株主総会 取締役 取締役会 監査役 会計監査人 会計 参与

このように多種多様に組織、機関の構成が可能とされており、従来のように「有限会社ですか、株式会社ですか」という問いかけにより、相手会社の概要を把握するということは困難である。

○ 加えて、最近はソニー方式の執行役員制度を導入している会社が多い

法律上の制度ではなく、会社の意思決定・監督機関としての取締役会と業務執行機能を分離する任意の制度で1997年にソニーが導入して以降、執行役員制を導入する企業が増加している。

執行役員制は、取締役が決定する基本方針に従い、その監督のもとに業務執行機能の強化、迅速化を図るため、「業務担当取締役および使用人兼務取締役」を「執行役員」とし、取締役の職責から解放して「担当部門の業務に専念」させ、取締役は重要な意思決定と監督機能を担うことを目的としている。

イ 「会社の重要事項の決定及び監督機能」と「業務執行機能」を分離し、取締役会を活性化する。

ロ 取締役会を、経営方針並びに重要事項の決定、そして業務執行の監督を担う機関として明確にその責務をはっきりさせる。

ハ 取締役の員数を削減し、取締役会の活性化と意思決定の迅速化を図る。

ニ 執行役員は、担当する業務の執行の責任を負い、取締役会により選任される。

ホ 取締役でない執行役員と取締役を兼務する執行役員がある。

ヘ 実際の執行役員制度を見ると、会社業務の第一線の指揮官が執行役員になっている場合が多いのかもしれない。
今回の会社法により、この執行役員制度の運用がどのような影響を受けるのか、注視すべき事項でもある。

○ また、会社は多種多様な種類の株式の発行が認められる。

イ 剰余金配当に関する優先・劣後株式

ロ 残余財産分配に関する優先・劣後株式

ハ 議決権の制限付の株式

ニ (全部ないし一部について、会社の)取得条項付の株式

ホ (株主からの会社に対する)取得請求権付きの株式

ヘ (一定事項について)拒否権が認められる株式(黄金株)・安保理株(五右衛門命名)

ト 取締役の選任ないし解任権付の株式など

○ 以上のように(一定の条件があるものの)多様な組織、機関の設計が認められるのみならず、(一定の条件があるものの)多種多様な株式の発行も認められることとなっている。

まさに、会社の根本規則である定款に定めることによる会社組織構成と会社経営の自由が拡大され、会社の資金調達、会社運営の方法などについての自由が大幅に認められている。

定款自治、会社自治の拡大である。

○ 以上のように多種多様な機関設計や種類株式の発行が認められているにもかかわらず、その情報の開示は十分配慮されているとは思えない。

あるのは定款自治、会社の自由 そして、ないのは情報開示である。

9 新会社法の周辺-LLP(Limited Liability Partnership)の新設

一 原則-なんでもありの事業形態

1 新会社法は従来の物的・社団法人性を持つ株式会社概念を実質上放棄したといえるものであり、新会社法の下、経済活動の活性化を促進させるという名目により「有限責任事業組合」という、極端に言えば、なんでもありの事業組織形態を新設した(有限責任組合契約に関する法律)。

イ 出資者は出資の限度でのみ責任を負う有限責任の組合である(有限責任)。

ロ 組合であることから、内部自治の範囲が広範である(自治範囲拡大)。

ハ 社員資格は自然人に限定されず、法人でもよい(法人組合員の容認)。

ニ 課税関係は、組合に法人格を否定することから、構成員である組合員への直接課税である。

ホ 事業組織形態について、従来は法人格の存否は大きな意味を持っていたが、現在においては、ニ記載の課税関係を除けば、法人格の有無はさほど重要な意味はなくなってきている(法人格制度の機能の衰退)。

2 このような「有限責任事業組合」の新設は、極端に言えば「なんでもあり」の事業組織形態を可能とする。

イ 従来の各種の取引等を規制する諸規制法令は、「行為者」が「他人」に対し、「特定の行為をする」際の規制である。

例えば、出資法は他人から金銭を預かり運用等する行為に規制を加えている。あくまでも、規制の対象となる行為は「他人から金銭を預かり運用する行為」である。

ロ 金銭運用事業目的の「有限責任事業組合」を結成し、資金提供者に出資させて組合員とし、運用の利益を配当名目で組合員に還元するという形式をとれば、実質的には、出資法の規制を免れることも可能となってしまう。

なぜなら、このような資金運用の形態は、「他人から資金を預かり運用する行為ではない」といえるからであり、あくまでも、自己(組合)の内部での資金運用の問題であり、組合内部の問題であると評価されるからである。

ハ これは一例である。

「有限責任事業組合」の容認は、既存規制法令を骨抜きにする可能性と危険性をはらんでいるものなのである。

3 骨抜き防止対策

イ このような「有限責任事業組合」の容認の危険性について、現行法令は三種の方法による骨抜き防止策を講じている。

 

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