人を被写体とした写真の著作権とその権利行使 

2011.10.23

大阪弁護士会所属 弁護士 五右衛門


一 写真と著作権

1 平成19年(ネ)第10003号出版差止等請求控訴事件知財高裁 平成19年5月31日判決
  (原審 平成18年(ワ)第5007号 出版差止請求事件東京地裁平成18年12月21日判決)

 写真を撮影する場合には、家族の写真であっても、被写体の構図やシャッターチャンスの捉え方において撮影者の創作性を認めることができ、著作物性を有するものというべきである。

一般人が日常生活のなかで特段の芸術的配慮なく人物を撮影するスナップ写真は、たとえ著作物であるとしても『薄い著作権(thin copyright)』しか認められず、その著作権は、肖像本人に譲 渡されていると理解すべきである。」とし、さらに「自分だけが写っているスナップ写真を書籍に掲載するのに撮影者の許可が必要であるというのは、一般の法感情からあまりにもかけ離れている」との主張に対しては「そのように解する法的根拠はないから、被告独自の見解であるというほかない」として、この主張を採用していない。


2 大阪弁護士会HP上の記載

 肖像権の意味としては、個人のプライバシーの保護として承諾なしにみだりにその容貌、姿態を撮影されない権利と言われています。
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 肖像を公表されたくないという権利も肖像権の1つの内容になりますが、相談者がその写真を公表することが侵害行為となるのかという問題です。
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 営利目的で利用すると侵害行為となる可能性はあります。有名人は自己の肖像を対価を得て第三者に利用させる財産的権利(パブリシティ権といいます)を肖像権の1つの内容として持っています?
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 よくテレビニュースで街角風景が写ります。大雪が降ったときのニュースで転んでいる人が写っていますね。本人とか知り合いの人は、「あいつこけてる」と話に花が咲くでしょう。しかし、本人はイヤですね。しかし、これは肖像権とかプライバシーの侵害とはなりません。その理由はニュースが極めて公共性の高いものであり、他方で一般人の感受性を基準として見たときに撮影された人がその肖像を秘匿すべきことか否かという判断をして侵害か否かを決めることになりますが、隠し通したいというものでないと結論づけられるからです。
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 旅行の写真に写った人を掲載するのはどうかという質問ですが、風景の一部として人物が写っている程度なら、その人の肖像権はかなり制限される、つまり弱められると思いますので掲載しても構いません。
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 人物が主体となっている写真はその人の承諾がなければ掲載は控えるべきです。この点はタレントとの違いがあります。
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 ひと口に肖像権と言ってもその内容は複雑です。写真を何の目的に利用するのかで結論が変わってきますし、写真の内容(どんな風に写っているのか、顔がアップとなっているのか、多数の人が写っているのか、風景に溶けこんでいるだけなのかetc)にもよります。
 裁判例でも肖像権の侵害を認めるものと認めないものとがありますが、いずれもケースバイケースの判断となっています。
http://www.osakaben.or.jp/web/radio/view.php?data=soudan_m31-20010210.txt

3 写真の著作権の特殊性
(1)通常、著作権者は著作物の複製権、頒布権等の著作権の内容となる諸権利を有している。
(2)しかしながら、前記知財高裁の判示を前提とすれば、写真を撮影し、当該写真の著作権者とされる撮影者は、当該写真について、無条件の複製権、頒布権等の著作権の内容となる諸権利を有しないこととなる。
 なぜなら、そのような権利の行使は、被写体である人の肖像権ないし人格権を侵害する場合があるからである。