民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案 

2014.11.29, 2014.11.30 訂1, 2014.12.4 追1

大阪弁護士会所属 弁護士 五右衛門(服部廣志)


目次

連載1 改正主眼、改正主眼、短期消滅時効

連載2 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効

 

連載1 改正主眼、短期消滅時効

 来年、民法の改正が断行されるという噂がある。
民事基本法である民法の改正は、法律に関心のある人にとって重大事であり、改正がなされる前に、その概要を把握しておく必要がある。
改正かなされた場合に狼狽えないために。

改正目的のひとつ

1 今回の民法改正には多様な面があるが、一番わかりやすい改正点は、従来、法解釈に委ねられてきた内容を、条文に明記し、条文に取り込むということである。

おかしな話であるが、従来の民法においては、
① 当該条文の適用要件の内容が、条文に明記されておらず、解釈という名で補充されてきた。
② ①記載の事情から、国民のものである民法が、民法という法律を勉強した人にしかわからないといった不合理が存在した。

今回の改正目的のひとつは、法律を国民の目線に、言葉に置き換えるところにある。 

その他

2 改正目的は、1記載に尽きるものではない。
法律の内容を国際標準に改める、とか、また、従来の解釈の破綻に起因するものもあるのではないかと思われる。

消滅時効期間
消滅時効期間について、現在の民法は区々に別れているが、改正法では、一律に5年とするようである。国際標準は、3,4,5年に収れんしつつあることが影響している。(By 内田 貴)

第7 消滅時効

1 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点

民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改めるものとする。

債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。
(1)  債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 
(2)  権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

(注)この改正に伴い、商法第522条を削除するものとする。

2 定期金債権等の消滅時効

(1) 定期金債権の消滅時効
民法第168条第1項前段の規律を次のように改めるものとする。

定期金の債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。
ア  債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
イ  アの各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき

(2) 民法第168条第1項後段を削除するものとする。

(3) 民法第169条を削除するものとする。

3 職業別の短期消滅時効等の廃止

民法第170条から第174条までを削除するものとする。

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連載2 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効

 連載1で述べたとおり、今回の民法改正の大きな目的は、「法律を国民の目線に、言葉に置き換え、また、解釈に委ねられていた部分を場分に取り込み、明記する」ということにある。その他、国際標準に法律の内容を変えるというような面もあるが、従来の法解釈、裁判所による判例の理論では、具体的に妥当な結論を求められなくなってきたというような、従来の判例理論の破綻による改正というような部分もある。

 その典型例が、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の点である。

 現民法の不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の規定は次のとおりである。

 (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
民法724四条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

 従来の裁判所の裁判例、判例法理によれば、上記の「3年という期間」は時効期間であり、従って、債務者が債務を承認するなどすれば、時効期間の進行は、新たに始まることとなり、いわゆる時効の中断ということが認められているが、上記の「20年という期間」については、中断というようなことが認められない除斥期間と理解されています。

  この「上記20年という期間を、中断ということが認められない、除斥期間と理解する考え方」は、後記のとおり、裁判例において、既に破綻しているのです。 

 後記のとおり,最高裁判所は,最高裁平成21年4月28日第3小法廷判決において「除斥期間説の実質廃棄宣言」をし,最高裁平成21年4月28日第3小法廷判決においては,これを「時効であると明記する法律の改正を求める」とまで明言するにいたっている。

このような経緯を経て

改正要綱仮案は
民法第724条の規律を次のように改めるものとする。

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。
(1) 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
(2) 不法行為の時から20年間行使しないとき。

 

すなわち,「20年の期間を時効であると明記した」のである。
要するに,従来の裁判例,判例法理によっては,具体的に妥当な結論をだすのに,行き詰まっていたのである。
これが改正の理由である。

イ 28年経過後の訴訟提起・・請求棄却・救済せず

最高裁平成元年12月21日第1小法廷判決

民法七二四条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解するのが相当である。

ロ 22年経過後の訴訟提起・・救済

最高裁平成10年6月12日第2小法廷判決

 不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6ケ月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6ケ月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。

ハ 26年経過後の訴訟提起・・救済・・除斥期間説の実質廃棄宣言

最高裁平成21年4月28日第3小法廷判決

 民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが,その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに不法行為から20年が経過した場合は,相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,同請求権は除斥期間により消滅することとなる。
 しかしながら,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。
 このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである(最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁参照)。
 そうすると,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。

ハの2

最高裁平成21年4月28日第3小法廷判決

民法724条後段の規定を除斥期間と解する運用をなしているところから,ここで上記判例変更をなす場合には,一定の混乱が生じかねない可能性がある。しかし,上記の判例変更の結果を受けて真に救済せざるを得ない事案は,社会的には極く僅かに止まり,また,それは個別に対応することが可能であると推察されるのであって,判例変更が社会的に相当な混乱を引き起こすおそれはないと思われる。
おって,現在,法務省において債権法の改正作業が開始されているところ,時効制度の見直しに当たっては,かかる観点を踏まえた見直しがなされることを望むものである。

ハの3

最高裁平成21年4月28日第3小法廷判決田原裁判官補足意見

私は民法724条後段の規定は時効と解すべきと考える。
現在,法務省において債権法の改正作業が開始されているところ,時効制度の見直しに当たっては,かかる観点を踏まえた見直しがなされることを望むものである。

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