代表声明文3・盗聴法強行採決は背任行為である



違法盗聴の疑惑隠した「盗聴法強行裁決」に抗議する
−−−−更なる慎重審議をもとめて−−−−−

1999年5月29日
インターネット弁護士協議会
代 表 牧 野 二 郎

 衆議院法務委員会は、野党議員欠席のまま、5月28日通信傍受法案、いわゆる盗聴法案を強行採決したことに、われわれは厳しく抗議するものである。

 かねてから、この盗聴法案は、国民の知らない間に電話の会話や電子メールなどを網羅的に盗聴するものであるため、通信の秘密を侵し、また、広く個人のプライバシーを侵害するものであることが指摘されてきた。日弁連の調査報告においてもその違法性がつとに指摘されてきた経過がある。

 この盗聴法案は、憲法の基本的人権である「通信の自由」を規制する重大法案であるため、広く国民の同意を得る必要があり、国会審議も十分に行われるべきことは、立案者である法務省をはじめ、関係者の共通の認識でもあった。この観点から公聴会を開催することが提案され、自民党政調会長代理丹羽雄哉氏も「幅広く国民の声を聞くことが必要」として、公聴会を開くとした(朝日新聞5月24日)。
 にもかかわらず、与党は突如「素人には分からない」(法務委員会自民理事山本氏)ので開く意味がない、と傲慢とも言うほかない理由により、その開催を否定したのである。(5月25日)。

 それまでの国会審議を通しても、この法案の危険性や曖昧さが浮き彫りになり、新聞記者などの除外を認める諸外国の制度に比べ、過度に表現の自由を制限していることも明らかにされた。

 確かに対象犯罪を絞るとされたが、実はきっかけを制限しただけで、問題の盗聴対象の会話、電子メールの範囲の制限は一切なく、会話のすべて、電子メールのすべてが盗聴されることも明らかになった。更には、インターネットにおける盗聴の実施が、電話回線の盗聴とは比較にならないほどの被害の拡散、大量のメールの盗聴結果を招来することも指摘されるにいたった。
 また、盗聴法がない現在でも、警察において違法な盗聴が行われているとする週刊誌の報道をうけ、「警察盗聴器納入問題調査団」が野党議員により構成され、実態解明が進みつつあった。共産党緒方氏宅盗聴問題に止まらない、警察による違法盗聴の存在が指摘されているが、この点は警察への信頼そのものの問題なのである。
 与党議員による、この突然の強行採決は、警察による違法盗聴の調査が行われる前に、そうした調査をすり抜けるように強行されたものであり、審議を尽くすべき議員の義務に違背する、背任行為というべきものである。

 現在の最大の問題は、盗聴という、非常手段を警察に委ねて良いのか、という点である。この非常手段は、国家の政治まで左右する力がある。ニクソン大統領による盗聴事件然り、韓国の「国会529号事件」然りである。また、この非常手段の前に個人のプライバシーは存在しないも同様である。

 われわれは、こうした非常手段の行使について強い疑念を持つとともに、警察が疑惑を晴らすことなくその非常手段を手に入れることを認めるわけには行かない。

 さまざまな疑惑がある中で、その疑惑を隠して、国会審議をないがしろにする強行採決は、真実を隠し、国民の信託を裏切るものである。

 われわれは、こうした背任行為に強く抗議するとともに、さらに、徹底した国会での議論を強く要請するものである。

以上

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