代表声明文2・法務省に対する質問書



   

代表声明2 インターネットに対する規制問題に対して

1996.12.1                 インターネット弁護士協議会                 代表   牧 野 二 郎  このたび、11月12日付けのご回答確かに受領いたしました。  忙しい中、ご回答頂き、感謝いたします。  さて、ご回答によれば、インターネットの関連では、「E−MAILシステム」 を、傍受の対象とするとのことでした。  そこで、メールシステムの傍受に限定して、次の二つの基本的な争点に対する法 務省の見解をお示し頂きたい。 第一 メールシステム傍受方法をいかなるものとして設定しているのか  インターネット上のメールシステムは、従来の電話による通信回線の占有使用方 法とはまったく異なるシステムによって運用されています。すなわち電話は1本の 電話回線の両端を2名がそれぞれ独占的に専用し、当該回線は、会話を行っている 間この特定の二名によって完全に専用され、他人の会話の混入はありません。  ところが、Eメールシステムは、いかなる回線を利用する場合も、通信内容がデ ジタル化され、パケット(小さな固まり)に細分化され、網の目に結ばれた回線網 を自在に経由して相手方までたどり着くという方式(パケット通信法式)を採用し ているので、1本の回線を特定のものが固定的に専有利用するのではなく、複数の 者が同時に利用するものです。  以上のシステムの違いから、電話の傍受は、回線や時間を特定して、当該通話者 間の会話であることを特定することが理論的には可能ですが、Eメールシステムの 場合は、回線による通話者の特定および会話の特定は、現時点では不可能という他 ありません。  従って、当然のことながら、わが国の通信回線を通過する、海外からの通信も、 電話回線などを利用するものですから、好むと好まざるとに関わらず、すべて回避 することになります。海外の通信まで傍受する結果になるが、国際的な合意がない 状況のもとで、強行していいものかなどの疑問もあります。  この間、警察のプロバイダーの捜索においてプロバイダーが利用しているハード ディスク内のメール情報を丸ごと押収したという新聞報道があり、国民に大きな不 安を与えています。本制度での「E−MAILシステム」の傍受とは通信回線を丸 ごと一網打尽に捕捉するという方法を考えているのか、あるいはハードディスク内 のデーターすべての差し押さえという方法を考えているのか、どのような特定方法 を考えているのか、といった点も明らかにされなければなりません。  そこで、以上整理して、次の点を質問します。  1 通信回線の傍受で、多数のパケット状になった多数者の通信内容を網羅的に    捕らえるのか。当該多数の通信の中から、盗聴対象をどのように特定し、選    別するのか。  2 海外からの通信の傍受には、国際的な合意が必要なのではないか。そうした    合意はあるのか。  3 プロバイダーの捜査においては、メールデーターのすべてが押収されている    という新聞報道があるが、現実のメールデーターの押収はどのようになされ    ているのか。  4 法案による、メールデーターの押収は、どのような特定方法をもって行われ    るのか。  5 現行法制度下でのメール自体、あるいはメール・データーの捜索・差し押さ    えという方法は考えられないのか。そうした方法によらず、あえて通信を傍    受・盗聴する理由は何か。 第二 暗号システムに対する基本見解はいかなるものか。  電話の傍受においては、電話による会話自体を暗号化する技術はなく、技術上傍 受は可能なようです。しかし、Eメールシステムでは、すでに多くの暗号が開発・ 利用され、現在も、さらに新たな暗号が開発されています。 現在すでに電子取り引きおいて電子決済のために強固な暗号が開発され、実用化 が着実に進んでいます。  御庁のE−MAIL傍受の発案は、犯罪者によるメールの暗号利用をいたずらに 煽り、促進する結果になることは確実ですが、暗号の利用に対し、いかなる対処を 考えているのか明らかにされなければなりません。  現実的問題として、現在の暗号の解読は、米国の進んだコンピューター技術にお いても極めて困難なことが明らかとなっています。さらにセキュリティーのための 「強い暗号」が次々と開発されている現在、それを我が国のコンピューターシステ ムで簡単に解読できるのでしょうか。暗号の解読も出来ない状況で、本法案によっ て、犯罪者の通信を暗号利用に追い込むことは、自らの手の届かないところに犯罪 者を追い込むことに他なりません。    米国では、暗号に関しては、「キーリカバリー方式」や「クリッパーチップ」と いうアメリカ政府の指定する通信データー暗号化の標準仕様を、民間の通信事業者 に採用するよう求め、政府が暗号解読を可能にする制度の確立を検討するというこ とです。 しかし、こうした制度は、政府による言論統制に結びつくという強い批判も行わ れています。    暗号の解読という制度は、言うまでもなく、国民の言論を盗み見するものであり、 慎重にも慎重でなければならず、国民の十分な議論と、総意で行われなければなり ません。安易な、解読・盗聴行為の実施は、国民の表現行為に大きな萎縮効果を与 え、言論統制にいたるものであることもあきらかです。    以上の疑問から、暗号に対する基本見解をお聞きします。  1 検討中の法案は暗号の利用に対し、どのような基本的立場にあるのか。  2 犯罪者の暗号利用に対し、現在どのように対処しているのか。  3 現行法ではどのような限界があるのか。検討中の法案によってどのように変    わり、犯罪者の暗号利用にどのように対処できるようになっているのか。  4 暗号の利用全般に関する規制立法を考えているのか。考えているとすれば、    どのようなものか。  5 暗号に関する国際協力は進んでいるのか。      第三 法制審議会のメンバーに関して  法制審議会のメンバーについては、すでに法制度策定の専門家が多数参加してい るものとは思いますが、検討案を見る限りは、インターネットに関する専門家が参 加しているかについて明らかではありません。  また、暗号に関する専門家の参加も明らかではありません。  インターネット上の通信の傍受に関する問題は、インターネットの開発を担当し てこられた専門家に問うべきものであり、法律専門家だけでは到底できないものと 理解しています。    インターネット弁護士協議会としては、法制審議会のメンバーに、そして、調査 検討を行う法務省刑事局の検討メンバーに、インターネットの技術に精通する専門 家、インターネットを運用している技術者・運営者、インターネット上の通信事情 に詳しい専門家を、直ちに加えることを要望します。    以上3点(第一、第二、第三)につき、正式な見解を求めます。 


いわゆる盗聴法案の概要

法務省刑事局検討案(いわゆる盗聴法案)抜粋

組織的犯罪刑事法整備参考試案全文及び事務当局説明要旨

代表声明文1・法務省に対する質問書

法務省回答1

法務省会見・内容報告

いわゆる盗聴法案に関する議論経過

盗聴法案についての清見勝利会員の見解