問答集:会社役員の責任 (1997年12月)

編集:金森 喜正

佐藤 泰範
こんばんわ、佐藤@札幌です

既にご存知かと思いますが、北海道拓殖銀行が倒産しましたよね。

一般従業員が、会社役員を相手に、会社を倒産させたことに対して損害賠償請求を出来ないものでしょうか。

会社役員の注意義務違反>善管義務など。

また、類似の判例、学説等ありましたらご教示下さい。

岩田 和晃
会社が倒産したことにより、失業し、損害を被ったので、賠償請求をしたいということですね。

会社役員(取締役)の善管(善良なる管理者)注意義務(商法254条3項→民法644条)や、忠実義務(商法254条の3)は、会社に対して負っている義務です。

で、その義務の違反に対して、損害賠償責任を定めているのが商法266条(1項5号)です。

ですので、損害賠償を請求できるのは、会社です。

ちなみに、代表訴訟というのは、会社(具体的には取締役)が、この損害賠償請求をしない場合に、株主が会社に代わって請求するというものです。

それから、取締役が第三者に責任を負う場合として、商法266条の3がありますが、これは通常会社債権者や株主が対象とされています。

従業員の損害賠償請求というのは、聞いたことがないです。

と、以上が「会社法」の教科書的な説明になります。

会社法は、株主や会社と取引関係に立つ者などの利害調整を目的としていますので、従業員の話はあまり出てきません。

他の法領域で定めがあるのかもしれませんが、ご参考までに。

なお、一般不法行為(民法709条)による損害賠償請求も考えられますが、具体的にどうなるのかはなんとも???

金井 高志
岩田さんが述べられているように、会社の従業員が会社役員に対して倒産の損害賠償請求をした、という事例は私の知るかがぎり、ないように思います。従業員と会社には雇用契約があるので、会社に対してその債務不履行で損害賠償をすることが可能でしょうけれど、会社が倒産した場合、破産法などで保護されている範囲での従業員の権利の保護がなされるのみと思います。

拓銀の倒産に加えて、山一証券の自主廃業(負債3兆円)のニュースを聞くと、バブルの頃、私は銀行や証券会社の仕事をしていた関係で、本当に時代の変化を感じます。

18日には「日本ベンチャー学会」というベンチャー企業の研究・支援を行う学会の設立総会と記念セミナーがあり、参加しました。

そこでのコメンテーターの大学の先生が、大企業の社員が、会社の都合で自分の行きたくもない部署に行かされること、自分が将来どの分野の部署にいるかの予測ができない、などのことに疑問を持たない、と言っていました。確かにこれは、会社が社員の面倒を一生見てくれるという前提があるからでしょう。

しかし、これからは、大企業でもいつなくなるか分からない時代になってしまいつつあります。会社に勤務する人にとって、勤務する会社を決めることについて、仕事の内容などについても自分で決めることが重要になるのでしょう。自分のキャリアプランを自分で決める人が増えてくれば、ベンチャーの起業や人材の流動化で日本の経済が復活できるかもしれません。

豊国 潤
倒産まで至らなくとも、明らかに会社に対して不利益な取引きをした場合はいかがでしょうか。

株主からではなく、社員(一般従業員)の立場からの訴えの可能性についてお聞きしたい、と思ってます。

岩田 和晃
不利益な取引をしたことにより、経営が傾き、給料が下がったとか、ボーナスがカットされたなどの損害が生じた場合ですね?

上に書いたことと同じだと思いますが。

佐藤 泰範
やっぱり役員たちは、その後の生活は保証されているだろうなぁ

それに引き換え一般従業員は....

和知 雅樹
元たくぎん「一般従業員」だった和知です。

役員もいわゆるサラリーマンです。いったん退職した際に退職金をもらっているだけまだましだと思います。ただその退職金で株を買い増す場合が多いと思います。その株券は現在一株3円で取り引きされています。

ずいぶん前から給与カットが行われていたようですから、在職中にそんなに良い思いをしたとも思えません。

まあ、生え抜きで支店長などを数ヶ店努めてバブル前に役員になっていれば、ずいぶん稼げたこととは思いますが、それとてものすごいストレスの引き替えによってもたらされたもので、老い先長くないと思われます。いろいろ問題もあったと思いますが、役員の振る舞いだけだったわけはないということです。

もちろん、世話になった諸先輩たちや、子供やローンを抱えているだろう同期達のことも心配です。ちなみにたくぎんはいわゆる大蔵省系の銀行といわれていました。戦後しばらくは政府系金融機関で、民営化後も発行済みの拓殖債券の償還が終わるまで、身動きがとれなかったと聞いています。プロパーの頭取が誕生するまではずっと大蔵省OBが頭取を務めていました。

−以上−