判例
平成五年(オ)第一四九二号平成一〇年三月二七日第二小法廷判決
要旨:
 定期傭船されている船舶の積荷につき船荷証券が発行された場合において、船荷証券所持人に対して運送契約上の債務を負担する運送人の確定は、船荷証券の記載に基づいてすべきである。
内容:
件名
損害賠償請求事件(最高裁判所平成五年(オ)第一四九二号平成一〇年三月二七日第二小法廷判決、棄却)
原審
東京高等裁判所

主    文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理    由

 上告代理人高橋正明、同西山安彦、同奥山量の上告理由第一について

 いわゆるニューヨーク・プロデュース書式等に基づく定期傭船契約によって傭船されている船舶が運送の目的で航海の用に供されている場合において、右船舶に積載された貨物につき船長により発行された船荷証券については、船舶所有者が船荷証券に表章された運送契約上の請求権についての債務者となり得るのであって、船荷証券を所持する第三者に対して運送契約上の債務を負担する運送人がだれであるかは、船荷証券の記載に基づいてこれを確定することを要するものと解するのが相当である。けだし、(一) 商法七〇四条一項は「船舶ノ賃借人カ商行為ヲ為ス目的ヲ以テ其船舶ヲ航海ノ用ニ供シタルトキハ其利用ニ関スル事項ニ付テハ第三者ニ対シテ船舶所有者ト同一ノ権利義務ヲ有ス」と規定するところ、(二) 船舶賃貸借契約の下では、船舶所有者から船舶の引渡しを受けた賃借人において船舶を艤装し、船長を選任して船員を雇い入れるのであり、船舶賃借人が船長以下の船員を指揮監督することにより当該船舶を全面的に支配し占有するものであるから、 賃貸人である船舶所有者が当該船舶に積載された貨物について運送人として運送契約の当事者となる余地はないが、(三) 右のような定期傭船契 約の下では、船舶所有者において船舶を艤装し、船長を選任して船員を雇い入れた上で、これを提供するものであるから、定期傭船者がいわゆる商事事項に属する一定の事項について船長に指示命令をする権限を有することはともかく、船舶所有者は、船長以下の船員に対する指揮監督権限を保持することにより依然として当該船舶を支配し占有し続けることができるのであり、(四) 右のような相違を考慮すると、定期傭船者を船舶賃借人と同視し、右のような定期傭船契約がされていることから直ちに、商法七〇四条一項を適用ないし類推適用し、当該船舶に積載された貨物について船長により発行された船荷証券の記載のいかんにかかわらず、常に定期傭船者のみがこれに表章された運送契約上の請求権についての債務者となり、船舶所有者は何らの責めを負わないと解することはできないからである。
大審院昭和九年(オ)第二三二〇号同一〇年九月四日判決・民集一四巻一四九五頁は、右と抵触する限度で変更すべきものである。原判決中、右と同旨をいう点は、正当として是認することができる。
 そして、本件については、所論の点に関する原審の事実認定は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りるところ、右事実関係の下においては、本件船荷証券に表章された運送契約上の請求権について被上告人関汽外航が運送人として責めを負うものとは認められないとした原審の判断は、結論において是認することができる。所論引用の当裁判所の判例はいずれも事案を異にし、本件に適切でなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。
 同第二について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原判決を正解しないでその法令違背をいうものであって、採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)