伝聞・法曹こぼれ話



弁護士と変護士

     某月某日、某地方裁判所の前の喫茶店でコーヒーを飲んでいると、ひまわりのバッジ(弁護士徽章)をつけた50歳過ぎの紳士が、60ないし70歳くらいの老婦人二人に話かけていた。

     貴方は相続の限定承認をしょうとしています。
     裁判官に尋ねられたら、「限定相続をします」と答えてください。意味を理解していないといけないので、再度お教えしますが、「相続する」という意味は理解できますね。反対に「相続放棄する。」平たく言えば、「相続しない。」と言うことです。
     限定相続というのは、「財産が借金より多ければ相続し、借金の方が多ければ相続の放棄をします」ということですから、裁判官に尋ねられたら、そのように、しっかりと答えてくださいよ。

     コーヒを飲む手が止まった。「何だろう、ちょっと変だよねぇ〜。」

     弁護士が素人にこんな説明をしていいのだろうか?
     わかり易い説明ではあるものの、不正確ないし間違った説明である。

     限定相続、限定承認という相続の態様は、「相続はする」しかし「負債については、相続した財産の価額を限度として、弁済する責任を負う(例えば、相続した財産の価額が500万円であれば、負債が3000万円あっても500万円しか弁済しない)」というものであり、単純な相続(財産も負債も全部承継するというもの)と相続放棄(財産も負債も承継しない)との中間のような態様であり、相続の放棄とは明確に区別され、またその手続き等も異なるものである。

     弁護士が素人に対し裁判官から問われたら「限定相続をします。借金が多ければ相続の放棄をします、と答えなさい」と指導するのだろうか?

     米国の市場開放の圧力により、司法界も開放の方向へ向かっており、現在司法試験の年間の合格者数は約1000人、一昔前の2倍の人数であり、やがて1500人にもなるという。
     弁護士数が増え、市民に親しみやすい弁護士、市民が気軽に弁護士に相談できるようになれれば、よいことである。
     しかし、市民は 「ひまわりのバッジ(弁護士徽章)」をつけている人の能力を判定することは困難である。
     テレビ等でお茶の間を賑わし、市民の間で著名ないし有名となっているひまわりのバッジ(弁護士徽章)をつけている人の中にも、同業者から「首をかしげてみられている人」もいるのである。

     弁護士と変護士を識別する必要がでてくるのかもしれない。

    (作者:コーヒを飲んでいた弁護士)